新生児から思春期までを対象に、風邪や胃腸炎、気管支炎、はしかや水ぼうそうなどの感染症や便秘、夜尿症など小児がかかりやすい全般的な疾患に対して適切な診療を幅広く行います。また鼻吸引や軽い中耳炎にも対応します。
一般的には、37.5℃以上を発熱と考えます。
「熱が高いと脳がダメージを受け、頭がおかしくなる、障害が残る」 と心配される方がいますが、熱の原因が髄膜炎や脳症などのような重症な疾患でなければ、問題がないことが多いです。40~41℃ぐらいの熱があっても、あわてて熱を下げる必要はありません。全身状態に大きな変化がなければクーリング等で様子をみてもよいでしょう。
発熱の原因であるウイルスや細菌感染症などと戦うことで体温が高くなるといわれています。つまり病原体の力を弱めると共に、体の免疫力を高める効果があります。子供の場合、熱の高さと病気の重さに関係がないことがあります。
寒気がある時は温め、寒気がなくなり暑がるようなら冷やしてあげましょう (クーリング)。
38.0℃以上を目安に薄着にしましょう。
お子様が寒すぎない程度で、Tシャツやランニング、パンツやオムツだけでもかまいません。
寝るときはお腹にタオルケットでも充分です。
38.5℃以上を目安に脇の下、足の付け根、背中などを保冷剤、アイスノンなどで冷やしましょう。熱冷まシートなどは解熱効果を期待できませんが、気持ちよさそうであれば使用してもかまいません。
脱水に気をつけるために水分を取りますが、一度にたくさんの量を与えようとせず、少しずつ (小さじ1杯程度、5 ml程度) 何回かに分けて飲ませてあげましょう。与えるものとしては、イオン飲料やお茶などが良いですが偏よらないようにしましょう。
水分が摂れ、寝られているようであれば、急いで受診する必要はありません。
※寒気がある、冷やすことを嫌がるようなら冷やさなくてもよいです。
小児科にかかる病気で最も多いのが “かぜ” です。かぜの原因は8~9割がウイルスによるものです。かぜ症状を引き起こす100種以上のウイルスが咳やくしゃみで唾液が飛び、人から人へ感染します (飛沫感染)。治療ですが、風邪に効く特効薬はありません。ほとんどは自然によくなります。安静と休養を心掛け、自然治癒力を損なわないようにするのが重要です。
上気道 (鼻からのど、気管の入り口にかけての空気の通り道) に様々な病原体が感染し、この部分に炎症を起こしている状態を総称して急性上気道炎と言います。原因のほとんどはウイルスで、代表的なものにはライノウイルス、コロナウイルス、RSウイルス、インフルエンザウイルス、アデノウイルスなどがあります。
主にくしゃみ、鼻水、鼻づまり、のどの痛み、せき、痰、頭痛、熱などですが、吐き気・嘔吐、下痢、腹痛などの消化器症状を伴うこともあります。通常、1~2週間程度で症状は改善します。鼻水は、はじめは水のようにサラサラしていますが、2〜3日すると粘っこくなり、黄色みを帯びてきます。発熱の程度はいろいろで、熱の無いことも多いですが、乳幼児では症状が強くなることがあります。
問診と診察で診断をつけます。血液検査をして、白血球数などから体内の炎症の程度を調べることもありますが、通常は、特に検査は行いません。症状、咽頭所見、周囲の流行状況から溶連菌が疑われるときには、溶連菌の検査を行います。せきが激しく、嘔吐や不眠などを伴うような場合は、気管支炎や肺炎の可能性を考えます。
大部分はウイルス感染症のため、特効薬はありません。症状によって解熱剤や痰きり、せき止めなどのお薬の対症療法を行います。水分補給や栄養補給をしっかり行い (特に乳幼児では、発熱時に水分をよく摂れないことがあるので、脱水に対する注意が大切です)、安静を保つなどを行ってあげていれば、ほとんどは自然によくなります。原則として抗菌薬は使用しません。
咳や鼻、熱の症状がではじめた場合、多くはウイルス性の上気道炎により始まり、悪くなると気管支炎・肺炎 (下気道炎) になります。咳やゼーゼーは徐々に悪くなり、適切なケアを行うことで自然に回復します。登園登校に明確な基準はなく、熱が下がり、食欲・元気が回復すれば可能です。
咳、鼻水、発熱などで、悪くなるとゼーゼーすることもあります。症状が出てから1週間前後が最も悪くなるとされています。
現時点では、特効薬はありませんが、痰切りなどの薬を使います。原因のうち細菌感染症やマイコプラズマ感染症の場合は抗菌薬が訊くことがあります。
自宅でこまめに鼻を吸う、部屋の適切な保温・加湿やお子さんの安静を行います。
むせこんではいたりする予防と呼吸が苦しくならないように1回のミルクの量を減らしてもよいです (1回20ml程度でもかまいません)。
咳、痰で機嫌が悪いときは少しでも痰を出しやすくするため、立て抱きにしてあげて、背中をさすり、痰をだしやすくしてあげてください。
症状が悪くなっている場合には2~3日に1度は受診しましょう。
熱が3日以上続く場合、細菌感染や中耳炎を合併し、抗菌薬が必要となることがあるため、受診しましょう。
ノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルスなどのウイルス感染と、サルモネラ、カンピロバクター、病原性大腸菌などの細菌感染による食中毒があります。中でもウイルス感染による急性胃腸炎がほとんどで、特に乳幼児に多いです。季節では冬に多く、突然吐き始め、続いて腹痛や水のような下痢 (レモン色から白色) が起こり、また熱も出ることもあります。約1~2週間ぐらいでよくなります。
ウイルス感染の場合は、嘔吐で始まり、1~3日間続きます。嘔吐と同時かやや遅れて、水様の下痢が起こり、1~2週間ぐらい続きます。
ロタウイルスは白色から淡黄色の便で、酸っぱいにおいを特徴とします。12月から3月に流行し、生後6か月から2歳に多いです。発熱を伴うことが多いです。ワクチンで感染や重症化を予防することが可能です。
細菌感染の場合は、食欲不振と嘔吐で始まり、水様便または膿や粘液の混じった便が頻繁にみられ、時に便に血が混じります。細菌の種類によっては発熱もします。
水分が全く摂れない、おしっこの数がいつもより少ないときは脱水症の可能性があるため受診しましょう。また2週間以上の下痢が続くときは、元気であっても一度受診しましょう。
■飲ませるもの
■食べさせるもの
溶連菌という細菌がのどに感染して、のどの痛み、熱、体や手足の発疹などの症状が出ます。舌はイチゴのようになります (すべての症状が揃うわけではありません)。主に飛沫感染でうつる病気です。溶連菌感染症のあとにリウマチ熱や急性糸球体腎炎を起こすことがあるので、きちんとした診断と治療が必要です。溶連菌は血清型が何種類もあるので何度もかかることがあります。
溶連菌は迅速抗原検査か培養検査で調べます。迅速抗原検査は綿棒で咽頭をこすって菌を検出することが可能で10分程度で判定できます。
溶連菌感染症のあと1-2週間頃に急性糸球体腎炎を起こすことがあります。顔や体のむくみ、明らかにおしっこが赤いなどがある場合は、蛋白尿や血尿の有無を調べます。尿検査を希望される場合は薬を飲み始めて約2から3週間後に1度検査しましょう。
のどの検査で溶連菌がいることがはっきりしたら、抗菌薬を内服します。ペニシリン系は10日間以上、セフェム系は5日間内服します。1日か2日で熱が下がり、のどの痛みも消えます。途中でくすりをやめてしまうと再発することがあるので、指示通りに最後まで飲むことが大切です。
・家で気を付けること
インフルエンザウイルスが原因で起こる病気で、インフルエンザ菌とは別物です。おもに飛沫感染 (くしゃみや咳などによって飛び散る飛沫に含まれる病原体が、口や鼻などの粘膜に直接触れて感染すること)により感染します。潜伏期は約1~5日間です。普通の風邪よりも急激に発症し、高熱が続き、筋肉痛などの全身症状がでてくることが特徴です。健康な人であれば、その症状が3~7日間続いた後、治っていきます。気管支炎や肺炎を併発しやすく、まれに命にかかわる脳炎・脳症や心不全になることがあります。
急激に38℃以上の高熱、悪寒、頭痛、関節痛、倦怠感などの全身症状、咳、痰、 呼吸困難、腹痛、下痢などの胃腸症状など
迅速検査がありますが、発熱してから6時間以内は陽性率が低いです。その陽性率は12時間で50-60%、24時間で80-90%ともされています。
発病後48時間以内に抗インフルエンザ薬を使用することが有効です。発熱期間を1-2日短縮することができます。
発症後5日が経過しかつ解熱後2日 (就学前は、3日を経過するまで) を経過するまで。
なお熱が出た日 (発症日) を0日と考えます。
1 .流行前のワクチン接種
インフルエンザワクチンは、感染後に発病する可能性を低減させる効果と、インフルエンザにかかった場合の重症化防止に有効と報告されています。
2. 飛沫感染対策としての咳エチケット
インフルエンザの主な感染経路は咳やくしゃみの際に口から発生される小さな水滴 (飛沫) による飛沫感染ですので、飛沫を浴びないようにすれば感染する機会は大きく減少します。
飛沫感染対策では感染者がマスクをする方が、感染を抑える効果は高いと言われています。
3. 外出後の手洗い等
石鹸による手洗いは、インフルエンザウイルスを物理的に除去するために有効な方法です。
4. 適度な湿度の保持
空気が乾燥すると、気道粘膜の防御機能が低下し、インフルエンザにかかりやすくなります。室内では加湿器などを使って適切な湿度 (50~60%) を保つことも効果的です。
5. 十分な休養とバランスのとれた栄養摂取
体の抵抗力を高めるために、十分な休養とバランスのとれた栄養摂取を心がけましょう。
6. 人混みや繁華街への外出を控える
インフルエンザが流行してきたら、特に御高齢の方や基礎疾患のある方、妊婦、疲労気味、睡眠不足の方は、人混みや繁華街への外出を控えましょう。
抗インフルエンザ薬の服用の有無に関係なく、異常行動を認めることがあるとされています。
小児や未成年者では、インフルエンザの罹患により、ウロウロと歩き回る・部屋から飛び出そうとするなどの異常行動を起こすおそれがあるので、自宅療養の際は少なくとも発熱がある時は一人きりにならないように配慮してください。
細菌に比べて小さく、細菌にみられる細胞壁を有しておらず、またウイルスとも異なり、無細胞性培地で増殖する微生物です。主に、咳や唾液などからうつる飛沫感染します。特に、幼児、学童に多いですが、乳児にも感染します。潜伏期は2~3週間です。頑固な咳が特徴で、1か月近く続くときもあります。抗菌薬が効くことがあります。
発熱としつこい咳が特徴です。早朝や夜間就寝時に咳が強くなります。
迅速の検査がありますが、陽性率が高くありません。
基本的には自然治癒しますが、抗菌薬が効きます。
マクロライド系やテトラサイクリン系などが有効ですが、副作用の関係から小児では主にマクロライド系を使用します。例えば、クラリス、ジスロマック、エリスロシンなどです。ただし、この系統の抗菌薬の味は苦く、飲みづらいというのが欠点です。
気管支炎、肺炎、中耳炎になりやすいです。胸膜炎、筋炎、脳炎など多種多様の疾患をみとめますが、まれです。
細菌感染やウイルス感染も合併することもあります。
暑い夏の季節に流行する夏風邪の一つで、乳幼児に多いです。主にコクサッキーウイルスやエコーウイルスにより、発熱を認め、皮疹と口内粘膜疹が出現し、次第に数が増えてきます。経口や飛沫感染をし、潜伏期は2~5日です。5~7日ぐらいで治ります。
発熱、皮疹などです。皮疹は手、足、口に主に認められ、他には膝、肘、お尻などに、平たい楕円形の1~5 mm大の赤みのある水泡が認められます。
時に熱性けいれん、無菌性髄膜炎の原因にもなります。
特効薬はありません。自然に治癒します。
普通のかぜの対処と同様に脱水に注意し、水分補給やクーリングなどで対応します。
薄味のしみない飲料、軟らかい食べ物を与えてもよいでしょう。
暑い夏の季節に流行する夏風邪の一つで、乳幼児に多いです。主にコクサッキーウイルスにより、咽の奥が赤くなり、口蓋弓に水疱や潰瘍 (びらん) を特徴とします。経口や飛沫感染をし、潜伏期は2~4日です。3~6日ぐらいで治ります。
発熱、食欲低下、咽頭痛などです。
時に熱性けいれんの原因にもなります。
特効薬はありません。自然に治癒します。
普通のかぜの対処と同様に脱水に注意し、水分補給やクーリングで対応します。
予後は良好です。
アデノウイルスは小児期のウイルス感染症の原因として多いものです。代表的な病気は夏に流行するプール熱 (咽頭結膜熱) が有名です。咽頭結膜熱は学校指定伝染病の一つでこの病気に罹ると熱が下がっても2日間はお休みしないといけません。プール熱以外にもアデノウイルスは扁桃腺に炎症を起こし、高い熱が出ます (アデノウイルスによる滲出性扁桃炎)。同時に眼の充血や眼脂 (めやに) がみられる事が多いです。流行性角結膜炎 (はやり眼) の原因となることがあります。別のアデノウイルス (40型や41型) では白い便が出る下痢症を起こします。これも便で診断できます。
高熱・咽頭痛・眼脂を主な症状です。
胃腸炎症状の場合は、白い便の下痢を認めることがあり、治るまで時間がかかることもあります。
扁桃炎で、扁桃に白い滲出物が付いていて、高熱があれば、アデノウイルス感染を疑い、のどの検査をします。
アデノウイルスに効く薬はありませんので、この病気と分かったら抗菌薬をお出しすることはありません。高熱が約5-7日間続きますが、水分補給で様子をみていきます。抵抗力の弱い乳児がアデノウイルスに感染すると肺炎などを起こすことがあるので要注意です。
咽頭結膜熱は、熱が下がり2日が経過し、主要症状がなくなるまで。
流行性角結膜炎の場合、結膜炎の症状が消失するまで。
アデノウイルスによる感染症で咽頭結膜熱の別名です。以前は塩素殺菌が十分でないプールの水から感染することが多かったためプール熱といわれていました。プール以外にも、患者さんからの鼻汁や咳 (飛沫感染) やウイルスに汚染されたものをふれること (接触感染) でもうつります。発熱、咽頭炎、結膜炎が主症状で、乳児では嘔吐、下痢といった消化器症状を示すこともあります。自然治癒するため、治療の基本は対症療法と十分な安静と水分補給をおこないます。アデノウイルスは、51種類もの血清型がありますが、3型 (最も多い)・4型・7型・14型などが主な原因ウイルスとされています。潜伏期間は2~14日です。好発年齢は幼児から学童とされますが、成人でも多く発症します。
発熱・のどの痛み (咽頭・扁桃痛)・眼球結膜の充血が主な症状です。
発熱は2~3日間持続し、40℃くらいの高熱を認めることがあります。また腹痛や食欲不振などの症状も伴うこともあります。目の症状としては、充血以外に、目の痛みや眼脂 (目ヤニ) などを伴うこともあり、3~5日持続します。
夏季に、眼球結膜の充血と発熱・のどの痛みを認める場合に疑います。
アデノウイルスについては、5分程度で判断できる迅速キットが使用されていますが、当クリニックにもあります。
特効薬はありません。症状の緩和 (解熱剤など) を中心とした対症療法が主流となります。
飛沫感染・接触感染の対策として、手洗い・うがい・プール前後でのシャワーや洗眼の励行などがあげられます。洗面所やトイレのタオルを介しての感染例も多く認められるため、手拭タオルの共用も避けるようにしてください。
発熱・咽頭痛・結膜炎などの主要症状が消失した後2日を経過するまで。
また眼脂からは2週間程度ウイルスが排泄されるとされ、一般的には2週間程度プールに入ることを見合わせます。
水痘・帯状疱疹ウイルスによる感染症で、感染力が非常に強く、飛沫感染が中心ですが、空気感染することもあります。発疹が出現する2~3日前からすべての発疹がかさぶたになるまで感染するといわれています。潜伏期は10~21日ぐらいです。(うつってから症状が出るまで)
水泡をもった赤い発疹が全身にでて、頭皮にも出現することが多いです。発疹は2~3日でピークとなり、その後乾いて黒いかさぶたになります。発熱することが多いですが、出ないこともあります。平均して約1週間でよくなります。
抗ウイルス薬 (アシクロビル) の内服、痒み止めなどの軟膏を使います。
ワクチンがあります。終生免疫で、一度かかると二度とかかりません。しかし免疫が充分でないと水痘ウイルスに再び感染します。このときは帯状疱疹という病気になります。
すべての発しんが痂皮化する (かさぶたになる) までとされています。
ムンプスウイルスにより起こり、唾液などでうつる飛沫感染です。潜伏期は10~21日です。耳下腺が腫れる1日前から腫れがひくまで感染力があります。難聴などの合併症に注意です。耳下腺の腫れがひいて、元気であれば登園登校可能です。自然感染すると終生免疫で一度かかると二度とかかりません。
耳下腺が腫れ痛み、発熱、頭痛、吐き気などがあります。
過半数の人は両側の耳下腺が腫れ、3~15日ぐらい続き、同時に発熱がでて、3~4日ぐらいで解熱します。2割ぐらいは熱がありません。
特効薬はありません。安静に保ち、水分補給に留意し、解熱剤やクーリングで対応します。
食事は酸っぱいもの、辛いもの、甘味の強いものは耳の下の痛みが増すので注意しましょう。
耳下腺の腫れが完全にひくまでは、外出・登校は控えてください。
ワクチンがありますが、合併症や重症化に有効とされていますが、任意接種です。特効薬がなく後遺症を残すことがありますので、予防接種を受け、感染から予防することが大切です。
耳下腺、顎下腺、舌下腺の腫脹が発現してから5日を経過し、かつ全身状態が良好になるまでです。
※ムンプスウイルス以外でも耳下腺腫脹をきたす疾患があります。以前、おたふくかぜと診断されても、確定診断ではないかもしれませんので、ご心配なら抗体検査を受けるのも一つです。
例) 化膿性耳下腺炎、反復性耳下腺炎、唾液腺結石、耳前部・頚部リンパ節炎、耳下腺腫瘍、エンテロウイルス、パラインフルエンザ、サイトメガロウイルスなどによる耳下腺炎。
RSウイルス (Respiratory Syncytial Virus) による感染症で、秋から冬にかけて流行しますが、近年は冬以外の夏に流行することがあります。乳幼児を中心に感染し、2歳ごろまでにほぼ100%感染します。主に唾液や咳などの分泌物で飛沫感染し、潜伏期は平均4日ぐらいです。2~3%前後の乳幼児が重症化します。特効薬はなく、吸引などの対症療法を行います。発症してから7日目ごろに症状のピークをむかえ、1-2週間ぐらいで治ることが多いです。
多い鼻汁、咳、発熱などの上気道症状をきたし、25~45%が喘鳴などの下気道炎 (急性細気管支炎、気管支炎、肺炎など) に至り、2~3%前後の乳幼児が重症化します。多くは、一週間前後をピークに良くなっていきます。早産児や慢性肺疾患などの既往がある場合、無呼吸などの症状が現れることがあり、注意が必要です。中には鼻汁だけの感染初期に、夜間睡眠中に頑固な無呼吸を呈し、突然死の原因になる場合があります。
鼻汁を用いた迅速検査キット(1歳未満のみ)などで診断します。
特効薬はありません。痰きりなどの薬を内服し、時に吸入などを行います。細菌感染などの合併もあり、その場合には抗菌薬を使用し、入院することもあります。特に、無呼吸になりやすいお子さんや酸素を使わなければならない、ミルクが飲めない等ある場合も入院治療します。重症化した場合は人工呼吸管理になることもあります。
感染後、長期にわたり肺機能の異常をきたし、喘息のような喘鳴を繰り返すことがあります。
現在、ワクチンはありません。
パリビズマブ (シナジス) という抗体がありますが、細かい決まりがあり、使用できるお子さんは限られています。早産児や慢性肺疾患、心疾患のお子さんに対して使用できます。
ヒトメタニューモウイルスは、昔から流行していたかぜの原因のウイルスの一つで、2013年から迅速キットで検査ができるようになりました。潜伏期は4~6日です。3月~6月頃に流行することが多いです。毎年、インフルエンザが落ち着きはじめる春頃に流行することが多いです。特効薬はありません。おおよそ1-2週間くらいで回復します。
発熱、咳、鼻水などのかぜ症状です。大人では咳や鼻だけですみますが、乳幼児や高齢者では、細気管支炎、喘息様気管支炎、肺炎を合併して、喘鳴が出て呼吸が苦しくなることがあります。
鼻汁を用いた迅速検査キットなどで診断できます。
特効薬はありません。おおよそ1-2週間くらいで回復します。食欲のない場合は水分補給を十分にするように気をつけて下さい。細気管支炎、喘息様気管支炎、肺炎になった場合は入院治療を受けることもあります。
鼻水から感染することが多いので手洗いが特に大切です。ウイルスが付いたドアノブを触ったり、おもちゃをなめたりして感染するので、周囲の大人の細やかな対処が必要です。インフルエンザの予防と同様に考えて下さい。流行している時は帰宅したら、まず手洗い、うがいをしましょう。
麻疹ウイルスが原因です。空気感染、飛沫感染、接触感染と様々で、潜伏期は10日前後です。感染力が強く、保育所などの集団で流行が一気に広がります。定期予防接種の麻疹ワクチンを2回受けることになっています。特効薬はありませんので、1歳を過ぎたら予防接種を受けましょう。
熱などのかぜ症状 (咳・鼻水・めやに) 、発疹を認めます。発疹ははじめからは出ないのが大きな特徴です。前駆 (カタル) 期→発疹期→回復期と経過します。
高熱 (38~39℃)・咳・鼻水・めやにが出て3~4日続きます。その後、一度37℃台に下がります。この時、口の中の頬の粘膜に白い斑点 (コプリック斑) が出ます。
発熱から3~4日後に一度熱が37℃台に下がりますが、すぐに上昇し高熱 (39~40℃) になります。この再発熱とほぼ同時に耳の後や顔から発疹が現れ、2~3日で全身に広がります。発疹の大きさはさまざまで、くっついてまだらになります。色は、はじめは鮮紅色で4~5日たつ黒っぽくなってきます。痒みや痛みは伴いません。この時期は眼の充血や声のかすれ、咳などの症状がもっともひどくなり、中耳炎や肺炎などをおこしやすくなります。
はじめの熱から約10日、発疹が出てから3~4日位で、症状は回復に向かいます。発疹は、すぐにはひきませんが、徐々に薄らぎ、最終的には痕を残しません。
特効薬はありませんので対症療法です。
予防接種で防ぐ事のできる病気です。お子様が1歳になったら、なるべく早く受けましょう。2回目の接種は年長児です。今までに予防接種を受けていない方、子どもの頃に1回接種しただけの方は、ワクチンを接種して、麻疹の免疫を高めておきましょう。
熱が下がって3日経つまで。
発疹が3日程度持続するため 「三日ばしか」 とも呼ばれます。発疹は顔面、頚部から始まり体幹、四肢に拡がっていきます。耳の後ろや後頭部、頚部にリンパ節腫脹も認めます。40-60%は無熱または微熱です。潜伏期は14~21日です。特効薬はありませんが、自然治癒していきます。また先天性風疹症候群の予防のために、妊娠可能年齢およびそれ以前の女性と周囲の男性に対してワクチンを接種し、感染対策することが重要です。
発熱、5mm程度の淡紅色の発疹、圧痛を伴うリンパ節腫脹 (耳介後部、後頭部、頚部) が出現しますが、発熱は約半数にみられる程度です。3徴候のいずれかを欠くと診断が困難な場合もあります。基本的には予後良好で、血小板減少性紫斑病、急性脳炎などの合併症をみることもあります。成人では、手指のこわばりや痛みを訴えることも多く、関節炎を伴うこともあります。これらのほとんどは一過性です。
確定診断のために血液検査で抗体をしらべます。
特効薬はありません。発熱、関節炎などに対しては解熱鎮痛剤を用いたりする対症療法です。
ワクチンが有効です。妊娠可能年齢およびそれ以前の女性に対する感染対策が重要です。女性と周囲の男性に対してワクチンを接種し、感染予防することが重要です。
発疹が消失するまで。
ウイルスの排泄期間は発疹出現の前後約1週間とされていますが、解熱すると排泄されるウイルス量は激減し、急速に感染力は消失するとされます。
妊娠前半期の妊婦の初感染により、胎児に先天異常を含む様々な症状を呈するが出現する可能性があります。先天異常として先天性心疾患、難聴、白内障、網膜症などが挙げられます。新生児期に出現する症状としては、低出生体重、血小板減少性紫斑病、溶血性貧血、間質性肺炎、髄膜脳炎などです。
風疹IgM抗体は再感染により上昇し、非特異的な反応により持続的に弱陽性を示す特殊な症例も存在するため、IgM抗体高値が直ちに、先天性風疹症候群のリスクではないことも留意すべきです。妊婦が風疹IgM抗体陽性の際には、必ずしも中絶を選択肢とせずに、2次施設へのコンサルトすることが望ましいです。
りんご病は伝染性紅斑の一般名で、頬が赤くなりや手足にレース状の発疹が出る病気で春に流行することが多いです。原因はパルボウイルスB19と呼ばれるウイルスです。このウイルスが体に入っても多くの方は何も症状は出ません (不顕性感染)。一部の方では感染後2週間位で発疹が出ますが、これは体の中にウイルスをやっつける抗体が出来てウイルスとの間に反応が起こる結果と考えられています。15才までに約50%の方が罹患し、抗体ができます。そして年齢と共に抗体保有率が上昇し、大人になっても感染する方がいます。特効薬はなく、自然によくなります。
頬が赤くなり、その後体や手足に地図状 (レース状) の発疹が出ます。強い関節痛が起こる事があります。
特効薬はありません。自然になおり、予後はよいです。
発疹が出た時点では他の人への感染はほとんどなく、りんご病は発疹があっても本人が元気であれば登校 (園) 可能とされています。
パルボウイルスB19は赤芽球 (赤血球の元の細胞) に感染します。このウイルスに感染すると一時的に赤血球の産生が低下しますが、赤血球の寿命は4ヶ月あるので健康な方では貧血症状は出ません。しかし、生まれつき貧血の病気 (先天性溶血性貧血) のある方では急激な貧血が起こります。また妊娠初期の妊婦さんが感染すると赤ちゃんにも感染し、流産などの原因となる事もあります。
生後6か月から1歳前後でかかること多く、主に2歳未満の小さな子どもがかかる病気です。生まれて初めての発熱の時に、実は突発という事が多いです。原因ウイルスは、ヒトヘルペスウイルスの6あるいは7が多く、現在では他のウイルスも原因と言われていて、数回かかることがあります。大人はすでにこれらのウイルスにかかっていて、時折唾液にウイルスが出てきます。その唾液が元で赤ちゃんにうつるのが主な感染経路と考えられています。特効薬はなく、自然によくなりますが、けいれん等を認めることがあります。
突然の高熱と解熱前後の発疹を特徴とします。
多くの場合、高熱は3日くらい続き、熱が下がる前後で発疹が出てきます。発疹は徐々に広がり、濃くなり、顔にも出ますが、2~3日で出たところから徐々にひいていきます。高熱が出る時に熱性痙攣をおこすことがあります。また下痢をしたり、解熱後不機嫌になったりすることがあります。
特効薬はありません。発熱や下痢などの症状をやわらげる薬を使用することはあります。
特に基準はありませんが、熱が下がり1日以上経過し、全身状態が良ければ行ってよいでしょう。
一般に排尿に対する生理的調節機構が完成する5歳以降で夜間睡眠中に無意識の尿漏れを生じる場合を指します。ちなみに、昼のみの尿漏れを尿失禁。昼・夜ともに尿漏れを生じる場合を遺尿症ということもあります。尿漏れの原因は、膀胱の容量に対して尿量が多いことでおこります。
に分けることができます。
尿路感染症や腎尿路奇形などがないかを尿検査や超音波検査にて検索します。
日中も尿漏れがある場合には、内分泌疾患なども疑い、血液検査も行う場合もあります。
膀胱容量が低下している場合には、脊椎疾患なども疑い、腰椎MRI等を行うこともあります。
ほかの疾患がないと確認された場合、夜間尿量 (夜尿量(=紙おむつなどで測定)+起床時尿量)、起床時尿比重などを測定し、病型の分類を行います。
焦らず・怒らず・起こさない・・・が治療の大原則です。
まずは生活指導。夕食は就寝の3時間前には終えるようしてもらいます。夕食後の水分摂取は極力控えてもらいます。(入浴も喉が渇くため、夕食前に済ませておく)
また食事の塩分は控えめとし、塩分が多いスナック菓子等の摂取は控えるようにしてもらいます。寒さ (体の冷え) も大敵です。靴下をはいて寝る・冷房は控える等の対策も必要となることがあります。
十分な生活指導を行ったうえで、夜尿の症状が改善しない場合、薬物療法の適応となります。
例) 抗利尿ホルモン剤・自律神経調節薬 (抗コリン薬) 等の薬剤が症状・病型に応じて用いられます。
熱中症は、外部環境から引き起こされる疾病です。
高温・多湿の環境下で過度のスポーツや運動・労作業を続けたとき、また、乳幼児では必要以上の厚着・炎天下での窓を閉め切った車内に放置されたときなどに体からの熱の放散が障害され、体温が上昇 (高熱) し、様々な臓器の熱性障害が生じることでおこります。特に乳幼児は、運動代謝による熱産生が高い反面、発汗による熱の放散は体の面積 (体表面積) が小さいために少ないとされています。このため、激しいスポーツなどを行わなくとも熱性障害が起こりやすく、十分な注意が必要とされます。
日本神経救急学会では軽症から順にⅠ~Ⅲ度に重症度分類をしています。
高温・多湿環境からの退避が原則となります。
Ⅰ度は、経口での補液が主体となります。特に筋肉のけいれんを伴う場合は、その主因が体からの塩分喪失を伴っている場合が多いため、電解質を十分に含んだ飲料水の摂取が望まれます。また、冷たいものは、消化管の働きを阻害するため、温めのものが適しているとされます。小刻みに分け、十分な水分摂取を行います。(意識状態などが悪く、十分な水分摂取が口から取れない場合は、医療機関での点滴が必要になります)
Ⅱ度では、医療機関での治療が必要になります。Ⅱ度の熱中症では冷却による体温コントロール (衣類を脱がし、ぬるま湯を浸したスポンジを使用、扇風機などで体に風を当てゆっくりと冷やす) と十分な補液が必要となります。
Ⅲ度では、入院での全身管理・集中治療が必要となります。生命の危険もあるため、状態に応じた治療が適宜行われることとなります。
熱中症は、高温・多湿の環境を避ける・十分な水分塩分の摂取で避けることができます。
乳児の場合、なるべく授乳の30分ぐらい前に内服させてください。授乳後では、満腹で飲まなくなり、吐いてしまうことがあります。
幼児の場合、食事の30分前でも後でもかまいません。くすりの種類にもよりますが、効果には変わりはありません。
溶かして飲む場合は、一回ずつ溶かして飲ませてください。
清潔にした指先にクスリをつけ、頬の内側に塗っても飲ませられます。
クスリを溶かしたままにしないで下さい。
溶かすものによっては、苦味が増す薬もあります。
容器を軽く振ってから一回分を計量して飲ませてください。水薬は甘くなっていることがありますから、清潔に保管してください。
直射日光、高温、湿気を避けてください。誤って飲むことのないように子供の手の届かない所に保管してください。
冷所保存の指示がある場合は冷蔵庫に保管してください。
感染症名 | 登園基準 |
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水痘 (水ぼうそう) | すべての発しんが痂皮化するまで |
流行性耳下腺炎 (おたふく) | 耳下腺、顎下腺、舌下腺の腫脹が発現してから5日を経過し、かつ全身状態が良好になるまで |
麻疹 (はしか) | 解熱後3日が経過するまで |
風疹 | 発疹が消失するまで |
インフルエンザ | 発症後5日が経過し、かつ解熱後2日を経過するまで (就学前は、3日を経過するまで) |
咽頭結膜熱 (プール熱) | 主な症状が消失してから2日を経過するまで |
流行性角結膜炎 (はやりめ) | 結膜炎の症状が消失してから |
百日咳 | 特有な咳が消失する又は5日間の適正な抗菌薬の治療が終了後 |
溶連菌感染症 | 抗菌薬の内服後24から48時間経過し、解熱していること |
ウイルス性胃腸炎 | 嘔吐・下痢等の症状が治まり、普通の食事ができること |
RSウイルス感染症 | 重篤な呼吸器症状が消失し全身状態が良いこと |
マイコプラズマ肺炎 | 発熱や激しい咳が治まっていること |
手足口病 | 解熱後1日以上経過し、普段の食事ができること |
ヘルパンギーナ | 解熱後1日以上経過し、普段の食事ができること |
伝染性紅斑 (リンゴ病) | 全身状態が良いこと |
ヘルペス口内炎 | 発熱がなく、よだれが止まり、普段の食事ができること |
突発性発疹 | 解熱後1日以上経過し、全身状態が良いこと |
伝染性膿痂疹 (とびひ) | 皮疹が乾燥しているか、湿潤部が被覆できる程度であること |